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エンジニア視点で解説する、経産省「2025年の崖」レポートの徹底解説

こんにちは。アシアル広報チームです。今回お話しするのは、4月に「2025年の崖」についてお話しした津田聡。2025年の莫大な経済損失を警告した大もとの『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』(2018年9月/経済産業省)についてQ&Aで徹底的に、かつ、わかりやすく解説します。

どんどん変化していく世の中に合った価値提供

Q.デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?
「『DXレポート』による定義は、市場や顧客の変化に対応することと、働き方や社内手続きなど組織内のイノベーションを起こすこと。新しい技術を使った、製品、サービス、ビジネスモデルなどが挙げられます。

ビジネスモデルの中には、社員の働き方改革みたいなところで、既存のワークフローを変えていくとかといったことも含まれるのですが、そういうデジタルな世界とリアルな世界、両方で価値を創出して競争上の優位性を確立すること。それが経産省のいう、DXの定義ですね。つまり、新しい技術を使って変えられるところがあるということだと思います」

Q.DXは、なぜ必要ですか?
「世の中はいろいろなものが変化しています。例えば、社員の働き方も今後どんどん変わっていくでしょうし、市場のニーズや消費者の行動も同じです。それに合わせて企業は提供する価値を変えていかなければならないし、社内の文化も変えていかなければいけないということが、現状としてあるんですよね。

それを実行するには、今、どういうニーズがあるのかをキャッチしなければなりません。そのためには、顧客の行動を分析するツールがあって、ツールからデータを取ってきて、それを分析して、見合う価値を提供できているのか判断することが必要になる。でも消費者行動分析ってこれまでもしていることで、それをなぜ新しい技術にしていかなきゃいけないのかって思いますよね? 

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POSレジ(これまでの技術)とEコマース(新しい技術)の違いがわかりやすいかなと思うのですが、POSレジは誰が商品を買ったか、どういうふうに商品を選んだかっていうのはデータとして取りにくいんですよね。

でも、Eコマースなら、このページを見て、これを選んで、こっちはやめたというデータも取れます。そういうデータが取れるのは圧倒的にオンラインのほう。よりナマの消費者の行動に近いものが取れるので、より詳細な分析もできるし、次のニーズも出しやすくなるという違いがあります。

要するに、新しい技術によって、取れるデータの量と質がこれまでより圧倒的に増えているわけですよね。だから、それをうまく活用できれば消費者に対する価値を大きく提供できるので業績は伸びていきますし、逆にDXが推進できない企業は負けてしまいますよ、ということになります」

ベンダーと一緒に成長できる人材を社内に置く

Q.では、DX推進のために企業がすべきことは?
「何を変えていくのが“自社の価値の創造”という意味で一番大きいのかを分析することだと思います。社員の働き方も同じで、ここを変えれば、よりみんなが働きやすくなって、より顧客に大きな価値を提供できるというところを見つけ出していくことですね。

そこから先の、どうシステムを作っていきましょうっていうのは、エンジニアと一緒にやっていく仕事になりますので、ベンダーに頼ってもいいでしょうし、自社でエンジニアを探すのもいいかなと思います。

システムは継続的に変えていくものと考えたほうがいいので、自社にエンジニアがいたほうがいいとは思うのですが、今の日本企業は基本的にITに関しては外注がメインですし、いきなりエンジニアを雇うのは、相当ハードルが高いですよね。採用や人事評価といった制度的な面でも開発環境という面でも、企業側の受け入れ体制が整っていませんから。その整備から始めるとなると大変ですし、まずはベンダーに相談するのがいいのかなと思います。

ただ、ベンダーが離れたり、担当者が急に変わってシステムのことがわからなくなるというリスクも。そのリスクを避けるために、ベンダーに任せきりにせず、一緒にシステムのことを理解して成長していくような人材を社内に置くことが大切かなと思います」

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システムは売り上げに直結しないが、出せる数字はある

Q.実際にDXを推進するためには、予算が必要です。決裁権を持つ人のよい説得方法はありますか?
「そもそもシステムの価値評価って難しいんですよね。サブスクリプションのようにシステム自体を商品として売っているならわかりやすいですが。売り上げに直結するものではなくて、何かサービスや商品があって、それを提供するバックヤードとしてのシステムであることのほうが多いですし。でも、何か数字を出さないと、システム改修の予算は取りにくい。

ですから、アシアルにご相談があった際は、効果としての数字……例えば、業務の効率が上がるから作業時間がこれだけ減らせます、とか、見える成果としてアピールできるものをクライアントと一緒に考えることもありますね」

Q.外部に求めなければならないものはありますか?
「それぞれの会社が一番提供したいコアな価値となる部分は、自社ならではの特徴があると思いますので、ベンダーと一緒に独自に開発する部分が多くなってくると思います。

それ以外の周辺業務的なところは、今はいろいろなWEBサービスが提供されていますので、新たにオリジナルのシステムを開発しなくても、既存のサービスに乗り換えていくことを検討してもいいのではないでしょうか」

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DXのスタートは「ここを変えたい」という要望から

Q.具体的なDX推進手順を教えてください。
「まずは、自社のコアな価値に関わるサービスやフローの中の“ここを変えたい”という要望が必要ですね。DXを進める中で、新しい要素を加えたいとか、この不便さをスムーズにしたいというよりよくしたい内容をまとめるのは、システムを依頼する企業の役目だと思います。僕らのようなベンダーを見つけるのは、そのあとです。

そこから先は、ベンダーと一緒に、よりこういうところに注力していけば、とか、こういう仕組みにすればよりよくなるよねというところに持っていって、実際にシステムを作っていきます」

主体的に関わることがDXの成果を出すポイント

Q.DXで成果を出すために必要なことは?
「二つあります。一つは、会社としてDXに取り組む担当者か部署が絶対に必要になると思います。もう一つは、その人なり部署なりが中心になって、実際に使う現場の方、取れたデータを使うマーケティング関連の方、経営層などいろいろな立場の人を巻き込んで、それぞれの視点でプロジェクトに関わっていただくこと。つまり、ベンダー任せにするのではなく、主体的に関わっていただくことです。

先月、笹亀が保険系企業様のシステム開発の成功例をお話ししていますが、あれはDXの好例ですよね。

開発過程で、プロトタイプを調査員の方に使っていただく手順を踏んでいましたが、ユーザー目線で考えることで、エンジニアはよりよいものが作れます。実際に使っていただくユーザーの方にプロジェクトの一部分でも参画してもらって、実際に使ってフィードバックをいただくと開発側でもユーザーをより深く理解できますし。

システムができあがってから使っていただくのではなく、早い段階から少しずつ、実際に使う方たちに関わってもらうのがいいと思います」

Q.最後に。新型コロナの感染拡大は、日本が抱えるさまざまな課題を明らかにしたと言われていますが、その中でもIT分野の遅れが顕著だと。それもDXが進んでいないからでしょうか?
「そもそもデジタル化されていないことが多いんです。働き方全般に対して、デジタルでできることはたくさんありますし、コア・バリュー以外に関してはいろいろな既存サービスを使えばいいと思います。そういうサービスを導入できる人が企業や学校の内部にいるかいないかで差が出ている部分もあるのでは。

これを機に、業務のデジタル化やDXに予算がつくといいなと思っています。今までずっと硬直していた分野ですし。経営者の方が危機感を持っていれば大きな予算も出てくるでしょうし、もっとオンラインでできることはないかなど、今ある業務の中でデジタルにしやすい部分を考えていただけるといいなと思います」

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PROFILE 津田 聡(つだ・さとし)
エンジニア / プロジェクトマネージャー
新しい知識を次々に吸収すること、問題に対して解決策を見つけることが好きで、自然にプログラミングに興味をもつ。
フルスタックエンジニアとして、フロントエンド開発、バックエンド開発、スマホネイティブ開発、アーキテクチャ設計、サーバー構築など、さまざまな経験を積む。加えて、プロジェクトマネージャーとしても従事。また、社内全体のセキュリティを維持・向上する活動にも取り組んでいる。
趣味は料理、音楽、ゲーム、読書、スポーツ観戦、散歩・旅行など。


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